アップルパイ
46U


孤閨こけいの痛みに耐えかねて 真夜中 菓子焼くキチネット
はちみつ計ってバタ練つて お粉がタルクでないのがつらい
蜜と油にあまくなめされ しっとりひかる 此の両手
貴方のくちにさしいれたくて うっとりうずく くすりゆび
“秘めごと”重ねたパイ生地で 
とろ火の情炎ほのおで煮た“罪の実”を
くるんで仕上げた アップルパイは 
あまりに上手に出来すぎて
お茶の支度をしたいのだけど とても母さまには出せませぬ
父さまに差しあげるは口惜しいし 兄さまになどとてもとても
やつぱり貴方の不在が痛い 貴方の唇 ないのが痛い
真夜中 菓子焼く “魔道”の所業
魔女のいいひと いまどちら?


自由詩 アップルパイ Copyright 46U 2023-11-19 03:49:09
notebook Home 戻る  過去 未来