氷紋
リリー



 ハイヒールの足許が
 男の鼻先を嘲笑う

  「欲しければ
   尾を振って ついておいで。」

 街の角で
 ふと女の姿が消えた

  「欲しければ
   そこで 涙をお流し。」

    ❄︎


 天上から氷の欠片
 例え心臓に刺さったとしても
 私が おびえねばならぬ事は何もない

 雪の夜を雪の中へ
 嵐の夜を嵐の中へ
 さまよい出ねばならないものへの おびえか

 さまよい出よと命令する中枢への おびえか

 ふとある夜
 男の血汐を呑みほしてしまいたい とあこがれた
 その あこがれへのおびえか
 一筋の鋭い風

 私を脅かすものは何?
 
 
 
 
   


自由詩 氷紋 Copyright リリー 2023-11-14 15:14:31
notebook Home