駅前
たもつ



午後の水泳の後のような
細く眩しい筆跡
液状のカーテンでは
不都合なことが多々あり
懸案となっていた模様替えの
おさらいをしておいた

燃えるごみの日の
温かな坂道の傾きを指でなぞり
落下しているみたい
放物線を描きながら
あなたは今、ひとつの
食事を終えた

駅前に行ったことがある、と
あなたは決まりごとのように
話し始める
駅前なのに駅の出てこない話
雪が降り続け
白い、とあなたが言うだけの話

その駅から
わたしは一人列車に乗る
雪のないところに行くつもりだった
本当は一緒に行きたい、と
疲れ果てて眠っているあなたに
語りかけるだけの話




(初出 R5.11.11 日本WEB詩人会)


自由詩 駅前 Copyright たもつ 2023-11-12 07:15:42
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