影の歌
こしごえ

あさり同士の会話がある海で
海は静かに波立ち
あなたと私は沈黙したまま
水平線の方へ目をやる。
秋の光ぽかぽかとして
雲は浮かぶ
ぽっかりぽっかり

砂浜の向こうの方で
見知らぬ人が
黒い大型犬とお散歩してる
午後の光に
影はさまざまな存在と共に在り
どこまでも影は黒く透けて
どこまでも黒く

あなたも砂の上に座っていて、
隣の私の手をにぎってきたよ
あの時
私も
あなたの手をにぎりかえして
手をつなぎあった
あなたと私

でもね。

あれからどれくらい経ったろうか。
今でも
あさり同士の会話がある海で
海は静かに波立っている
人知れず
存在している影も在る。

影は今 夕闇に解けて
天には星々が瞬き始めた





 ※ 初出 2023.11.07 10:23 日本WEB詩人会


自由詩 影の歌 Copyright こしごえ 2023-11-07 10:41:37
notebook Home