しょうゆ顔
イオン
揚げ物にしょうゆをかけたら
変人扱いされて僕は困った
魚貝類のフライなら解るけど
コロッケとかトンカツにしょうゆは
理解できないと言われたあげく
僕がしょうゆ顔だから許すとなったが
それから外食するときは
周囲の目を気にするようになった
ある日のこと食堂の隣席で
何をかけるか問題が勃発した
初老の男性が主張したのは
しょうゆ屋から聞いた話で
しょうゆはニスで
ソースはペンキだ
ニスは木目を消さずに素材を活かす
ペンキは木目を消して素材を包む
旨いものにはペンキを塗りたくない
御婦人方は頷いてすぐに話題を変えた
その日から僕は自信を持って
しょうゆをかけていた
メンチカツに
しょうゆをかけながら同僚にその話をする
僕はソースのような仕事は嫌だ
しょうゆのような仕事がしたい
同僚はソースをかけながら答える
相手によって
ソースとしょうゆを適切に使い分ける
それが仕事だよ
使い分けできていないかも
メンチカツの端にソースをかけると
洋風になって気分が変わった
ソース顔の同僚が微笑んだ