古い手紙を読んでいる
竜門勇気


電車を一人で待っている
さよならを待っている
ここにいない人が待っている
さよならを待っている

たすけてだって
笑ってるよ
ポケットの中にどんぐり
財布の中に切符が一枚
食わせ物はどっちだ?
正解はどっちもさ
見かけよりも役に立たないし
見えてるよりもずっと遠いところまでつながってる

電車を一人で待っている
僕は最初から続きのない物語
君はそれを知らずに迷い込んだかわいそうな犠牲者
なんてこった
体がばらばらで、ましてや心なんてもう・・・
とてもあなたを愛している人たちに合わせる顔がない
八つ裂きにされたって文句は言わねーさ
八つそれぞれで泣きながら朽ちていくだけ

電車を一人で待っている
二つの顔で待っている
一つは泣いてる
もう一つも泣いている
無意味な4つの目で
涙をこぼし続けている

なにがおまえらがどうのこうのじゃ
お前の前におるのはおまえとおまえとおまえじゃ
ぼけこらカスの精子のなれの果てが
大物ぬかしやがって気に食わんのじゃ
歯ぁがちがち鳴らして気持ちよぉなっとるけど
なにがお前らじゃぼけカスしょうもない
自分で自分のチンカスなめとって満足しとれや
今度天下の往来でお前らじゃなんのいうとったの見かけたら
何するかわからんぞ
おどれがどうのじゃねえぞめちゃくちゃしたるからの
涙の数だけ
おどれがおまえらじゃやらぁクソじゃいうたもんの数だけ
へど吐かしたるからの
一緒くたに、面も見ずにいうたもんの数だけなんぼだけでも
涙の数だけ
血反吐をはかしちゃるでよう
何がお前らじゃ
わしはわしじゃボケの出来損ないが偉そうに講釈垂れよって
なにがお前らじゃカス
あんたのわき役になった覚えはねえわ

電車を一人で待っている
駅に一人で立っている
二時間後の電車を待っている
毎日ここで待っている
ポケットのガムを触っている
古い手紙を思い出している
何度も読んだ手紙を思い出している
小さな写真を思い出している
今日、これから何が起きるのか知っている
最後の安全弁がまだ閉じている
古い手紙を読み返している
小さな写真を思い出している
最後の安全弁は閉じている
恋だけが夜を食い止められる
恋だけが明日を遠ざける
僕の信仰はまだ生きている



自由詩 古い手紙を読んでいる Copyright 竜門勇気 2023-11-03 13:46:35
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