春の海
板谷みきょう

海は碧く澄んで うらら 波音閑か 
かもめの声 空に溶けてた
水面に浮かび渡る漁り舟に 
風は遥か遠く高く
波は白く光り 海は蒼く深く広く
かもめ黄昏祈り 
月を探して 鳴いているのか 
鳴いていたのか 春の海で

陽は沈み 
波に 兎 朧月夜のにじむ月 
逆巻く波間の彼方に跳ねて 
漂い弾け 
寄せては返す幾千幾万 
明かゝる月夜に兎跳ぶ 
縦横無尽に 吹く風に 
飛ばされる 鴎は 
潮風夜風に放浪いよろけて海の果て迄
大波小波に 奔る兎 
帰るに帰れぬ 月明かり追い駆けて
待ちわび焦がれた月の兎

月追い求むる波間の兎

白い かもめ 荒波越えて空高く 
翼濡らして 別れを惜しむ 
しののめの明けゆく夜に雲は流れて
空は白々と白み始める

海は碧く澄んで うらら 波音閑か 
かもめの声 空に溶けてた


自由詩 春の海 Copyright 板谷みきょう 2023-11-03 11:39:36
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