愛おしい
たもつ



あなたを音にする
わたしも音になる
狭いけれど
小さく響き合う
梨の実のように
透きとおった瞼に
指先で触れてみる
それだけでもう
抱きしめている

古い通り
澄んだ廃屋
団地を吹き抜ける
風の結び目
すべては雫
あなたと一緒に知っている
いくつかのこと
どうでもよいくらいに
わたしたちの大切なもの

汗ばんだあなたの皮膚で
目覚める朝がある
体温と湿度で満たされていく
とてもありふれて
愛おしいけれど
思いはいつも
わたしの皮膚のところで
行き止まりになる





(初出 R5.10.25 日本WEB詩人会)


自由詩 愛おしい Copyright たもつ 2023-10-26 04:43:27
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