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AB(なかほど)




魚屋の前ではきっと
夕焼けが足りないと 
うつ向いてしまうのだろう



戻って来た理由もどうでもいいので
僕も
ほんとにくさいと笑って食べた



世界の全てが優しさで包まれるように
花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる
ように



いつまでたっても
「あの頃」
なんて言っている自分もぶらさがっている



帰り道でもない道を通って
アパートに辿り着くと
飼い主のない猫に好かれて



凸凹配位座はいつでも漂っていて
なにかの拍子に
繋ぎ合っている手のひらの合間にもある



ようやく腰を上げた門番は無精髭でにこりとして
十二番目の石から昇る昼と夜のことを詠いはじめた
今も続く詩を



そのときはじめておじいの顔つき変わって
おかえりい
いうた気がした



どこからか冬越しバッタが飛んで来て
奥の方からうすく漏れる光に
恍惚の目を滲ませていた



当たった顔の 谷やんを
誰も見たこと ないけれど
負けても笑う 谷やんの
その顔を見たくて ホルモン屋

  



  


自由詩 okaeri.com 1-10 Copyright AB(なかほど) 2023-10-23 20:43:35
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