秋冬
リリー



 栗の焼けるにおい
 私が一人 歩いている街中に
 ほろ苦く
 かさかさと
 音を立てて秋が 散る

 雑踏をさまよいながら
 ほのぼのと胸うずめるなつかしい思いが
 何と暖かく 私を包む事か

 黒い毛糸の帽子を編む夜
 一杯のカフェオレ
 まろやかな香りに優しい時間 
 深まりゆき

 古城を ガラスの城の様に映すイルミネーションに
 物も言わず冬は訪れ

 親しい人達への
 うつぼつと湧きあがる愛情の中に
 確固として
 冬は訪れ

 風の腕の中で
 ねりかためられ 
 吹き散らされる
 わたしという一個は喜び勇む

 ああ、確かな響きで
 冬が訪れる



自由詩 秋冬 Copyright リリー 2023-10-15 16:29:06
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