The Inerasable

「まだ私を抱いていて」

貴方の部屋に響いた声は

既に誰の声でも無くなっていた

ベッドの傍らのサングラスに映る

エンドロールが滲んで消えた


「貴方の傍にいたかった」

あの季節の幾つもの奇蹟は

跡形もなくその動力を喪っていった

玄関に残された腕時計が生み出す

確かな響きだけが私に遺った


「どうか幸せになって下さい」

受話器から流れた掠れた声は

流れる血の暖かさを語ってくれた

窓際に飾られた写真が未だに

孤独を溶かす焔を焼べてくれる


自由詩 The Inerasable Copyright  2023-10-14 13:39:46
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