頭痛薬を切らす
ただのみきや

抜け落ちた時間のパースに映り込む
秘密の横顔
渦巻き波立つ色味の底から
語ることもなく侵食する
気配だけが
景色を歩き回る
赤さびた鉄柵や種子をつけた枯草
ねめつける光に卒倒した長い影の隆起した沈黙

迷える金魚の静かな仕草
地図の巻紙を吹かしている
まばたきで嵐を起こし
裸に勲章をつけた男たちの目の裏に火をともす
素足の下の沈黙 磨かれた頭骨
海からの特急に旗のよう
人生はひるがえり表裏の違いと一体性を踊って見せた
耳だけが瞑ったまま乗り込んで
都合のいい未来で買い物をする
こどもたちの舌が
写真の中の雨より苦くなる

ゆれる予言の尻に触ろうと
白い手が蝶のように光をさまよっている
膝がガクガク震え
頭に乗せた壺からせっかくの飴玉をこぼしてしまう
剃刀 剃刀だときみの足跡が笑った
わたしたちの血はひどく薄い
抜け落ちた歯の隙間から冬のような吐息が星空まで続くことはない


  

                       (2023年10月14日)












自由詩 頭痛薬を切らす Copyright ただのみきや 2023-10-14 12:04:02
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