Weak Coffee
リリー
コーヒーは言うのです
女は専門店の浅煎り豆を使ってドリップした
ブラックを好み 今朝も
辛子色のアメリカンダイナー風マグカップに
注がれる一杯
キッチンで女のまわりに
よく眠れたの?
気分はどう?
香り高く囁いても
微笑みもしない
北の砂丘の夕暮
海に迫った山肌の薄い雪を見て
波のたわむれ
風のたわむれに
唯 一とき心から笑ったけれど
街に戻った途端
とりすまして化粧しようと
冬よりも寂しい顔になり
消えた夢など
春風の 落としものだったのだ
だから
一緒に朝のワルツを踏もうよ
と誘っても 可愛げもなく
冬よりも厳しい顔だと
コーヒーは その思い吹きすぎかねて
ためらいながら言うのです
「夢が消えた女というものは扱い難い…。」