或る日の一日
こしごえ

おはよう、と一言写真へ声を掛ける老人。
写真のなかの人は宙へほほ笑んでいる。
木製の円卓の上には朝食のパンとコーヒー
祈りの言葉を宙へささやく老人
陽光に影は濃さを増し、老人はパンを持ち

幼子はさっきまで泣いていた大声で。
幼子は今ニコニコだ母親にだっこされて。
幼子は、その存在だけでも一つの希望だ

鳩時計が十二回鳴いた頃に、
一人の男が刺されてしまった。
何万年も
争いは絶えない。
命を落とした男はピースをいつも吸っていた

だだっぴろい草原を
象の群れが
水を求めて列になり歩いている

少女と少年の二人は
この日
初めての
キスをした
二人はこの後ほほ笑みあった

夜気の澄む公園で
月を見上げる
人が居る

これらのさまざまな事が起きているのだ。
同じ地球という
この愛すべき一つの星で。
私は今日息をひきとる。
私は今日産声をあげる。





 ※初出 2022.10.22 日本WEB詩人会


自由詩 或る日の一日 Copyright こしごえ 2023-10-10 10:39:10
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