うつつ
由比良 倖
季節の猫に触れてはいけない、
音楽は常に涙でいっぱい、
頭をもたげて、
性格とは離れて、
乾いた風景、
どこを見渡しても、喉が渇いていて、
光を浴びて、虹色で
マングローブみたいで、
私は楽器の一部になりたい、
どんな情報も、
私の心に刺さらない、
脱皮前の蛇みたいに、
部屋の中にはいくつもの虚空の島があって、
マグカップに映るプリズムの中で、
私は有機体の夢を見る、
どんな宣伝も私には届かない、
サイボーグになりたい、
夢の中で、
私は、蝶みたい。
(また夏を越えて生きてきた。)
(私はここにいて。)