うつつ
由比良 倖

季節の猫に触れてはいけない、
音楽は常に涙でいっぱい、
頭をもたげて、
性格とは離れて、

乾いた風景、
どこを見渡しても、喉が渇いていて、
光を浴びて、虹色で
マングローブみたいで、

私は楽器の一部になりたい、
どんな情報も、
私の心に刺さらない、
脱皮前の蛇みたいに、

部屋の中にはいくつもの虚空の島があって、
マグカップに映るプリズムの中で、
私は有機体の夢を見る、

どんな宣伝も私には届かない、
サイボーグになりたい、
夢の中で、
私は、蝶みたい。

(また夏を越えて生きてきた。)
(私はここにいて。)


自由詩 うつつ Copyright 由比良 倖 2023-10-08 10:30:12
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