リリー

 真夜中の草深い町はづれを
 莫進する列車に
 ふと吸いこまれる 優しい魂

 詩友よ
 貴方のやさしい魂が はがゆくなって
 流るるにまかせよとは思えども
 私の愛情が足りず
 疲れた貴方を慰めてあげられない

 それぞれに光たたえて柔らかく
 露おく けさの
 田園の草になれぬものか
 と
 願えども 焦立ちて
 醜さが心に巣食う鬼と化す

 夢追い人な貴方の未来
 その実生活が、はかなきものに思え
 不信の日の午後
 唇をへし曲げて悪態つく

 赤く濁った流れが
 いつもの水路をはるかに超えて
 小石を押し流す
 
 あかく にごった雨の悲しさ
 鬼とても
 からたちの棘に刺され
 血噴く指をなめて笑うしかなく

 霧の中より幻の様にあらわれる女は皆
 重きコートに思索を包む
 詩友よ
 そういうものに
 私も なりたいのだ



自由詩Copyright リリー 2023-10-08 07:35:36
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