鬼
リリー
真夜中の草深い町はづれを
莫進する列車に
ふと吸いこまれる 優しい魂
詩友よ
貴方のやさしい魂が はがゆくなって
流るるにまかせよとは思えども
私の愛情が足りず
疲れた貴方を慰めてあげられない
それぞれに光たたえて柔らかく
露おく けさの
田園の草になれぬものか
と
願えども 焦立ちて
醜さが心に巣食う鬼と化す
夢追い人な貴方の未来
その実生活が、はかなきものに思え
不信の日の午後
唇をへし曲げて悪態つく
赤く濁った流れが
いつもの水路をはるかに超えて
小石を押し流す
あかく にごった雨の悲しさ
鬼とても
からたちの棘に刺され
血噴く指をなめて笑うしかなく
霧の中より幻の様にあらわれる女は皆
重きコートに思索を包む
詩友よ
そういうものに
私も なりたいのだ