三つのプレリュウド (旧作)
石村
Ⅰ
うつろな瞳に透徹する秋気の約束。
驟雨を受ける唇の愁しみ――十月!
(鮮やかな
血色
(
ブラッドレッド
)
は落ち……)
一滴照り映える秋蝶の
微光
(
ひかり
)
、
ひそみまつはる薔薇色の
交感
(
タッチ
)
。
Ⅱ
少女達の窓を訪ふ深夜の降雪。
しめやかに虚空に充ちて、無音の
交響
(
シンフォニイ
)
は
展
(
ひら
)
く。
結ぼれる透明な星の
縮像
(
ミニアチュル
)
、
銀狐の夢が彫琢する細密な沈黙に
何時しか、星のやうに美しい少年の幻影は映る――
過ぎて行く冬。
Ⅲ
シトロンの森に陽射しはうらうらと焦立たしく
宝石を舐める鳩の羽を少年は残らずむしつた。
それから落ち着かない身振りでケエプを脱ぎ
川べりから狩の女神が水浴びを誘ひ
植物のやうに彼を抱いた。
水辺に揺れる夏の花――清潔な午後の転生!
(一九八九年十一月四日、同年十二月三日、一九九一年八月二十一日)
自由詩
三つのプレリュウド (旧作)
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石村
2023-10-02 14:52:27
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