きたぐに (旧作)
石村



凍りついた曇りぞらと

あをぐろく執念しうねくうねる海の

きたぐに

確然としてくらいちからのくに

俺は心ひそかにきたぐにを愛し

乾燥した都市から遠く北方を眺めやる

鉄くづのやうにたれこめた空をふりすてて

いつさんにきたぐにへ疾るのだ

俺は氷点下の生を渇望し

いまにも都会の冬を叩き割りさうだ

暴君のちからのみなぎりは

ただきたぐにを願望す


      (一九九〇・一・二七)




自由詩 きたぐに (旧作) Copyright 石村 2023-09-30 12:44:20
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