女の脚
リリー

 
 にぎわう大通りのバス停
 心無しか暮方の鼓動
 増したような

 とり巻く人影に
 女の脚がふとためらう
 (昨夜、踵にオリーブ油をぬらなかったけど……。)

 コンサートホール前の道端、
 ふと黙りこむ女の脚
 その上ふうわり 秋のそよぎに燻る
 雲の色

 花の様に
 にこやかな恋を
 風の様に 忘れ果てた女の
 欠けゆく月の光
 歌の出なくなった此の頃

 昨晩、貴方の日頃を占ったら
 悲しみと出た
 私の日頃を占ったら
 喜びと出た
 ちょっぴり唇に浮かんだ密かな笑み

 そんな 女の脚がヒールの踵を気遣いながら
 しなやかに往く
 
 


自由詩 女の脚 Copyright リリー 2023-09-23 09:21:09
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