白い壁の女
アラガイs
グレーのスーツが似合う彼女は普通のお嬢さんで
普通の家庭に育ち普通に教育を受けてきた
彼氏の部屋は引っ越しをしたばかりで
壁はまだ白いまま放置されて無口のままだ。
まだ片づけてないけど、遊びにおいでよ
そんな彼は絵画が大好きで、なかでも現代アートが好みで
四方八方に飛び散る線やカラフルな色使いの物色には人目を憚らない
ここには黒いシックな図柄 向こうには対照的な白と赤 それから
やさしくみつめる青い風景写真 海と 国境を挟むのは水着のモデルたち
壁は瞬く間に夢の世界へ色変わりした。
しばらくして/訪ねてきた彼女が彼の壁を眺めてからは
/もうおわかりだろう /その日のうちに別れを告げられた
/わたし、白いままの壁が好き
それからだった
頸筋と背中に草模様の刺青をした女の子/虹色の猫を連れて部屋に居座り続ける/物語
あなたも刺青、しなさいよ / 人形がみつめる
彼氏は自分の肌と白い肌を見比べていて
あたまから背中の皮を剥いてみる
白い下地の壁を剥ぎ取り/空色足跡が付いたポスター/貼り替えた。