(みっつの青のこと)
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   ワルツ



 青のつぶが昨日より
 すこしだけ小さい

 明日になれば 目に見えなくなって
 ひろく つめたく降るだろう
 そして

 濡れた道ばたで
 セミとコオロギが ひそひそと
 次のことを噂して
 夕べの痛みから かけ離れてゆく
 そして

 網にゆびをかけたのは誰
 白いホーローを
 しずかに叩く やさしい雨

   いくつ 歳をかさねても

 そんなにさみしいのなら
 ひとつに なりたいのなら

   育てきれない ちいさな声で

 純粋なかけら 野良猫のように
 たくさんの名前を持つ ワルツ
 けれど 包まれてもいて

 時が経つほど 低くなるから
 自分が何かも 気づかないまま
 水も いつまでも満ちず




     *




   ちいさな秋



  落ち葉の上に
  降り注がれるひかり

  不意にさわぐ木もれびに
  遅れて届く指のはなれ

  どちらも青に降りてくる
  ちいさな秋

  道のかいなに
  そっと、てのひらをひらく
  あたたかい
  そして静かな
  むこうに花が
  さいている




     *




   嵐の夜



 雨のなかに
 うつしい人がいて
 慈しみを絶やさない
 やわらかい胸があって
 ひどい悪についても語る
 すべて違う青なのに

 あなた 臆病なそのこえ
 なんども震えてる
 あなた いつの間に
 なみだになった
 唇が
 上手にひらかないのはどうして

 かなしみを乗りこえ
 ふたりを照らす
 雲のすき間の かすかな光

   落ちる線は
          たぶん

   ほとんど
          おなじに似て

 木の葉が 落ち葉と呼ばれる
 縫い閉じられた
 嵐の夜は
 みんなで手を繋ぐ

 もう、誰もおきざりにはしない
 これから
 あの星だけを見つめる





自由詩 (みっつの青のこと) Copyright soft_machine 2023-09-17 13:49:00
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