くびれ
ただのみきや

つかまえて
響き奪い合う あの 声のもつれ 
贄になり損ねたひとつのくびれを
ハマナスの実を煮て
死んだかもしれないかもめに金貨を乗せた
白い靴下
うらがえる羞恥を指先で広げ
青ざめた自己像を飾花で覆った
恣意的奇行と甘い歪の中で

死者をまとう
くびれは巫女 
歩き回る匂い
いのちが漏れてゆく
唇がしぼんでゆく
誰もがまばたきをほんの一瞬だと思っている
疑いと不安が
裸の姉妹たちのようにベッドに入って来る

糖衣にくるまれた一粒の痛点
わたしはわたしを飲み込んだ
空っぽのグラスを抱いて
指がタップを踊り出す

灰が空腹を満たすことはなく
喘息の風車は歌うだけ
耳の万華鏡に潮が満ちるころ
臓腑は花びら
隠されてきた色彩は流れに狂い嵐になる
逃げる声も追う声も
鏡には映らない
映らないはずの声を鏡の中で見つけてしまう刹那
銀河は破顔する

くびれをなぞって唇は旅をする
無限大のヘソにそっと種を植えた
地軸が傾くくらい
愛は嗚咽であり恫喝である



                      (2023年9月16日)












自由詩 くびれ Copyright ただのみきや 2023-09-16 17:36:40
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