無への祈り
凍湖(とおこ)
日が暮れてひとりの棲み家に戻る
靴を脱ぎ
1Kのアパートのなか
フローリングに膝をつき
頭を垂れる
声もなく
神すら必要としない
祈り
どうかあしたも日が昇ってください
いやずっと夜のままでいてください
すべてのひとよ、わたしを忘れてください
いえずっとずっと覚えていてください
冷えた血が沸騰するのでまんじりともできず
ただ無限に膨らむ憶いで破裂するまえに
我を忘れようと努力する
昼間にまで祈りをなめらかに引き延ばすので
アルコールに固く封をする
いつか
わたしを物質と非物質に切り離す
銀色のメスを待っている