寂然と水鏡
あらい

光が反射するから
憎んで見える
遮るものが
あって
はじめて
背負うものがあると知る

あまり甘くもない半月をすりおろして、
かがやきもしない琥珀糖にまぶした
苦くもない 痛くもないのに
口からこぼれはじめた、

きれいごとの うそ

くさりはじめるまえに凍らせて 
みんなおなじすがたにかえる。
永遠の夢にくぐした、そのまえに
錆びつかせたと言わせたい
少し値下がりした 夏 でしたね



海のあるくらしにも充分 
ありふれた日常にも多分
なにも求めない

届かないところまで 唄っていたからだ

くらんでいたのだと
大分 理解するまでに 
くだをまく 塒のこと

なまぬるく 日々 溢れ出したからだ
 
黄昏、寂然と水鏡に曝す

だれよりもわざとらしく、
えげつなくキレイな
いきをはく
と 何重も 帯を惹く 

空気よりやわらかで 強情で壊れやすい
火がついたような そうでもないような
何処か逃げ出してしまいたかった

夜の虫だ まつりのあとだ 

一服する。
停留所から流れる 蜩を
追いかけていた。
ゆうべだった。その呼吸、

朝焼けまでが未練がましく泣きながら
また腐ってしまう 退色した薄化粧の夏



堰を堪え箱に詰められた手形は 生きているから
吸い寄せられる 紫の空に月が星が烟るように煌く

緑青の鳥籠から カワリバナかと咲う
包み隠すあと 汚らしい唇慰めにも
正直なところ。と茎を啜る

互いを愛撫するように敷き詰められた
生黑い風が 安易な処を剥き出しにして
花も舟も鏡も提灯も、どの生き方にもすべて
違う姿を纏わせるわけだから

ただ茹だるような靄が、さいごまであり
やはり 狂っているのだろうさ

地平線より太陽が微笑うよう
描かれた、
塩水より泥水より
土の中から
線香花火が生えてきたから。

もうあかんのだろうとおもった

指の股から人の顔が見えてしまったから
隠れていたのかといまさらにきづいた。
覆ったところで 見知ったかおりだから 


裸足で逃げた 肢体たち
ベランダから しろいくもに告る

貪ると白雲
無惨にも白磁
霧幻な白煙

今はまだ、海の底のトイピアノ
やすらかでなだらかな波風が
ただただ ひかれている
ただ 傾けられた すがた 
夏が終わる。かたち、だけの


自由詩 寂然と水鏡 Copyright あらい 2023-09-14 02:19:50
notebook Home