ぼくらが幽霊になるまで
中田満帆
捧げられたものと与えるものの区別がつかないままで、
ぼくは語って、きみは答えた、のはぜんぶがぜんぶ正解じゃないから
なにものともつかない悪夢を乗せて亡霊がインターステイツを走る
あかときのまぼろしみたいなかたちでもって説明書を読むとき、
セメダインがぼくの足下で泥酔していることに気づかざるを得ないのはきっと
きっときみのせなかにある自爆ボタンに魅せられたからだった
だのにきみはぼくを裏切ったばかりか、
形式を破壊した
『殺しを呼ぶ卵』──そんな映画が上映された町で、
ホドロスキーのまねをする演出家たち
だからぼくは虐殺したんだ、夢のなかの親や姉を
答えのないからだを求めてしごく茎はまだ熱いからね、
きみがもっとも嫌悪する手法で演じられるハメット、
ホロメス、ドーキンスたち
『愛について語るときに我々の語ること』?
どうも見憶えがないバードマンの思考のなかで、
ひらめいた花が評論家を撲殺するからといって、
甘えることはできない
応えることはできない
なぜ、
なぜなら、
われわれはまだじぶんの声を発見してないからと
じぶんの声のない詩人たちが吠えてる
だってふさごとよりも愉しい快楽が、
自己確認がどこにもないからだ
きっときみの心臓なら
十時間は持つ
たったいま現れた、
装填済みの拳銃のように
いっせいにみんなからたちの葉を射貫け
ぼくらが幽霊になってしまうまえにさ。