箒星
リリー
讃えられるべきものが青春であるならば
それは軌道をめぐって来る
氷と塵の微小天体の様なものかもしれない
海が のどかに凪いでしまわない内に
美しい夢も
ほっぺたゆるむスウィーツの甘みもぬぐい去り
鋭く 激しく鳴る一本の鉄線になりたかった
つんつんと あらゆるものに向かって反抗し
荒れていた季節に自分の姿見失って
長く劇しい感情を忘れゆき冬の夜空見あげて
私は自分を偽った
銀杏の若芽を指さしても
山の姿を指さしても
ちっとも目を輝かさない少年に
「そんな時期はすぐすぎるのよ。だから美しい。」
と 解ったような口をきいた
私に失われた 稚さへのかすかな
ねたみ
背高い少年の面影に
小さく 私の姿が箒星のダストテイルに広がって
消え失せ
やがて和んでゆく時のおとずれる
青春って良いものなのだろうか