( 旅立ち )
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 そろそろこの町を出ていこうと思う

   もうそんな時期なのかい

 うん 吐く息がさ

   そう 秋だからな

 吸う息とだいぶ違ってきたから

   思いのほか早かったな

 思いのほか早かったよ

   去りながら 人は思いしか残せないから

 ダイアもコインも 服も鋏も

   記憶にとって ものたちは

 それを扱う こころでしかなかった

   白いだけの紙細工

 風化してゆく角砂糖みたいだよ

   ばらばらに散らばった

 こころの欠けらを 繋ぎあわせて

   草木がたてる音と 響かせるように

 ひとつながりの海をすくって

   源流をのぞきこむ枯木のおわりを

 みじかい秋に燃やそう

   そう そして最後に

 夕日を粧って燃やすよ

   そろそろ時間だな

 そろそろ時間だね

   町は 繋がってなどいない

 町は 道のようには見えてこない

   風のような複雑さと 単調さを持ちきれず

 不意にとぎれ 行きどまるだけ

   住所はいらない

 ただ そこがあるだけ

   じゃあ、さよならだ

 さよなら、わたし





自由詩 ( 旅立ち ) Copyright soft_machine 2023-09-11 11:16:08
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