( 旅立ち )
soft_machine
そろそろこの町を出ていこうと思う
もうそんな時期なのかい
うん 吐く息がさ
そう 秋だからな
吸う息とだいぶ違ってきたから
思いのほか早かったな
思いのほか早かったよ
去りながら 人は思いしか残せないから
ダイアもコインも 服も鋏も
記憶にとって ものたちは
それを扱う こころでしかなかった
白いだけの紙細工
風化してゆく角砂糖みたいだよ
ばらばらに散らばった
こころの欠けらを 繋ぎあわせて
草木がたてる音と 響かせるように
ひとつながりの海をすくって
源流をのぞきこむ枯木のおわりを
みじかい秋に燃やそう
そう そして最後に
夕日を粧って燃やすよ
そろそろ時間だな
そろそろ時間だね
町は 繋がってなどいない
町は 道のようには見えてこない
風のような複雑さと 単調さを持ちきれず
不意にとぎれ 行きどまるだけ
住所はいらない
ただ そこがあるだけ
じゃあ、さよならだ
さよなら、わたし