月の味方は詩人だけ ・ ニ
ただのみきや
満ちても欠けても美しい
月は
満ちることも欠けることもない
くもった鏡
見つめきれない太陽の
希釈された容姿をまとい
見上げる者のこころを映し
憂いに潤み
満ち引く愛を
蒼白の殺意へと作り変える
老いた娼婦の荒れた肌
その痘痕を
国々は先を争い
こぞってなぞる
神話に痴漢する
武骨な手つき
ああ愛しき女神のしゃれこうべ
愛でるこころをこじらせて
詩人の歯噛み甘噛みの
とどかぬ言葉を放ってみるが
羽蟻にまかれて地に落ちて
酒におぼれて抱き寄せた
水面の月はつかめずとけて