柔らかな死
ひだかたけし

赤いサソリ留まるソーセージのような壺の取っ手
真っ暗な闇にくすんだ黄の満月が貼り付いて居る
笑う眼の無い石膏像は此処には居ない誰かを迎え
無数の青白い小さな尖った花達の足下に散らばる

 ゆったり湾曲し漆黒に聳え立つ垂直、
 悪と悪の間に立ち均衡を取る善に
 一つの観念の知覚を送り報せて
 段階を踏む意識の明度を試す

対立し合う響きに赤いサソリ動き出し
毛並み艶めく黒馬の砂漠疾駆し緑の草地に至る

生まれたての
子供のような柔らかな死、
厳粛な移行に備え 

魔と魔の狭間の人、

切り開かれる
新たな視界凝視するため

ひたすら生きる、ひたすら生きる。




 
 


自由詩 柔らかな死 Copyright ひだかたけし 2023-09-09 17:32:12
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