柔らかな死
ひだかたけし
赤いサソリ留まるソーセージのような壺の取っ手
真っ暗な闇にくすんだ黄の満月が貼り付いて居る
笑う眼の無い石膏像は此処には居ない誰かを迎え
無数の青白い小さな尖った花達の足下に散らばる
ゆったり湾曲し漆黒に聳え立つ垂直、
悪と悪の間に立ち均衡を取る善に
一つの観念の知覚を送り報せて
段階を踏む意識の明度を試す
対立し合う響きに赤いサソリ動き出し
毛並み艶めく黒馬の砂漠疾駆し緑の草地に至る
生まれたての
子供のような柔らかな死、
厳粛な移行に備え
魔と魔の狭間の人、
切り開かれる
新たな視界凝視するため
ひたすら生きる、ひたすら生きる。