勾玉エロス
ただのみきや

見つけてはいけない
声の
足首だけを残して
息を散らした
書き記すその先の
うつろの体温に
暮らしを溶かしながら
包む目の灼熱
やわらかい星たちの分裂を
おのが背に貼られた地図に行き迷い
隙間なく笑いを添付せよ
まどろみを脱ぎ捨て
ハエたちのまさぐる中空の心臓
肋骨に絡んだ青黒い根の
おもむくままに
脆く
忌まわしく
手なづけられたい
唇の素振りで
蓋をした
破裂
そぎ落とされた
甘い耳障りの目録だけが
光の舌にめくられて
滴らす
むつごとに
擬態した
忌むべき意味の
正しき爛れ
いわれなき違和の
淫らな乱れを
張り巡らせよ
死者たちの神話の神経網
風を見送り
後ろから刺されるために
一本のひまわりが
夢よりも濃く燃えていた
あの緑の小道
ヒスイを身ごもり破水した
苔むした骨の記憶の中で



               (2023年9月9日)











自由詩 勾玉エロス Copyright ただのみきや 2023-09-09 10:31:25
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