サクリファイス
soft_machine

 きみにあげた 乾いた骨は
 ある深さの空で生まれ
 漂っていたのだと思う 低い声で 細い管で
 貪る世界から すこし離れていたかった
 喉の重みからぬき出した小骨

 きみにあげられないのはその肉
 青白い月の実が 口の中で滴り
 ふくらんだかと思うまにしぼむ
 感触に操られるまま
 写真がつくうつくしい嘘より
 ありのままの日々を過ごさなくてはならないのなら
 大切なものから
 きみにあげたい

 それとも
 捧げることで 消えてしまうことで
 きみの未来を照らせるのなら
 もう、何も惜しいはずがない
 お願い 言って わかるって

 風になびきひろがるレースに花をからませ
 音もなくひろわれた砂のペン
 天にかかる 海獣の夢から採譜した しおざい 階
 そしてその和音
 はじめて覚えたことばを思い出せるなら
 はじめて感じた愛情がいつまでも色あせないなら
 わたしに残る最期の嘘は
 あなたのことが好きです
 その代わり ・ ・ ・

 その代わりわたしにも下さい
 あなたのなって欲しいものになれる権利を





自由詩 サクリファイス Copyright soft_machine 2023-09-08 15:15:20
notebook Home