エイリアン・ブルー
TAT
何故だか不意に
お気に入りのグラスを割ってしまって
指にサビオを貼った
それでも今日は
俺一人のために
分針も秒針も止める気は
無論なく
俺は公共料金の支払い票を持って
マンションの重い扉を開け
永い永い
天竺よりも遥かな
コンビニまでの旅に出ようとしていた
するとコンビニから子供が駆けて出てきて
全速力で俺にぶつかった
ほらほら危ない
ぶつかるよと
母親が
叫ぶ声も届かず
構わないぜ
もし君の命を救えるのなら
今すぐ火口に身を投げてやる
慌てて母親が俺に近寄ってきて
大袈裟にペコペコしていたけれど
俺が驚いていたのは別の事だ
サビオの下の
俺の血はもう
トイレの水のように汚い色をしてる
深い深いマゼンタだ
暗い汚いマゼンタだ
人間
年は取りたくないね
俺の血はもう
便所の水みたいな色をしてる
昔はメロンソーダみたいに鮮やかな
宇宙人の緑色だったのに
昔は喫茶店のソーダ水みたいに
クリアーで透明な赤色だったのに
今じゃ俺の血はもう
俺ですら受け入れられない
こわばった色をしてる
やれやれだぜまったく
やれやれだ
ようやく宇宙人を卒業した俺は
テラ・インコグニタよりも遥かな
マンションまでの家路を
ちょい急ぐ事にした
自由詩
エイリアン・ブルー
Copyright
TAT
2023-09-04 02:59:42