夜勤
たもつ


暗闇の中で働く
囁く
声と指は一定の距離が保たれている
そのために肉体がある
肉体のために空港がある
滑走路に置かれたピアノは
調律が三時の方向にずれたまま
夜明けの離陸を待っている
週末になると
この街では影が買える
道路が薄く伸びて臨海まで続く
昼間に捨てられた足音が
消える間際に小さな音をたてる
やがてまた溢れ出す
真新しい足音
真新しい人
不安と焦燥は質が悪い
けれど鞄の中には一握りの
幸せを隠し持っている
怪獣が攻めてきたぞ
そしてさよなら




(初出 R5.8.30 日本WEB詩人会)


自由詩 夜勤 Copyright たもつ 2023-08-31 07:04:03
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