ジョルノ
soft_machine

 海岸の匂いをかるく靡かせ
 君のスクーターが通りすぎるところ
 退屈な一日は始まるより早く終わったりする

 君のサンダルが扉の前にぴたり揃うと
 呼び鈴が鳴るのに
 まるで気づかなかったように驚いたふりした
 君を待ってるつもりなどない
 僕の毎日は
 君の気ままな支配を受けいれて始まる
 そんな風に

 夏の花火を
 冬まで持っていこう
 グラスを流れる水で洗いながら
 やがてじっと水面を見つめたね
 ピクニックもふたりの暮らしみたいだね
 あの川の向こうまで
 ずっと繫いでいてと
 指を重ねた
 そうして伝えたかったものがいつまでも謎で

 ある日を境に
 さよならのかわりに
 鳴らすクラクションが
 ふつりと聴こえなくなってから
 ぼくは川には行かなくなった
 橋の上から
 ただの水の流れを
 眺めるだけでいいやと思った
 これが本当に
 誰も待っていないことなのだと

 水を水で薄めるように
 僕らのことばにも、やはり何も現れなかった
 赤いテールランプ
 一日、という名のジョルノ
 あるいは日々
 たったの50ccで
 次の人を探しに君だけを連れて
 




自由詩 ジョルノ Copyright soft_machine 2023-08-30 10:31:25
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