スフィンクスみたいに、誰か、守ってくれないか？
僕を。

スフィンクスみたいな、彼女希望！

そして、そう言うからには、そうさ！僕はピラミッド！
クフ王みたいな、大ピラミッド級の男なんだ！
母なるナイルも必要だが、そんなワガママは言っていられないな。

僕は、いつか、本物を見たいんだ。
そびえたつピラミッドを下から、のけぞるように見たいし、
頂上からだってみてみたい。

でも、今は、テロがこわいんだよ。
人質にされて、この世とオサラバになるのがオチだ。
夢の中ででも見れたら、ラッキーてなもんさ。

だから、とりあえず、僕のスフィンクスを見つけたいんだ。

ま、実際、スフィンクスは、怪物らしいけど、
僕は、怪物みたいな勇ましい女子が好みでね。

てなわけで、スフィンクスを僕の女に例えたわけよ。

男性なら、怪物と言われる、ボクサーがいるな。
確か、４階級制覇したような。

うん。その女版でも、おおいにけっこう。


そんなこんなで、
２階の書斎、ふんふん鼻歌歌いながら、エジプトに関する資料を整理していたら、
窓から風がふいて、資料をぶんどっていきやがった。
まったく。
困ったもんよ、と、
ぐちぐち、文句言いながら、
階下に行くと、


日傘をさした、この界隈では珍しい美女が、僕の資料を拾ってくれた。

よおく見ると、まるであのカエサル、いや、シーザーをその美貌で落とした、
クレオパトラに似ているではないか！

なんなら、僕がシーザーになってもかまわないが、、、。

ちと早計か。
見た目が美しくても、中身まで美しいとは限らない。

美人を鼻にかけてる女も多いからな。
「あの、これあの部屋から舞ってきて、地面に落ちてきたのですが、あなた様のですか？」

クレオパトラが僕に話しかけてきた。
僕は、とっさに組んでいた腕を広げ、

「そう！そう！いや、マドモアゼル！ご機嫌いかがですか？よかったら、中に入ってお茶でも、、、。」
「けっこうです。急いでいるので。悪しからず。」

そう、かたっ苦しい言葉を並べて、クレオパトラは、足早に立ち去ってしまった。

どうやら、中身も悪くはなさそうだ。
蛇に注意とでも、釘をさしておけばよかったかな。

クレオパトラは、最後、毒蛇に自分の身を嚙ませて死ぬからな。

いや、おせっかいだな。
言わなくて正解だ。

しかも、僕がシーザーになるならば、暗殺されて死ぬんだからな。

クレオパトラもシーザーも、仲良く天に召されるわけで、
こりゃ、アンハッピーなんだか、ハッピーなんだか、わからんな。
解釈による。

しかし、政治家は暗殺されてばっかだな。
昔も今も。

命がけってことで、ずいぶんたくさん、給料貰ってそうだけど、大目に見るか。

甘いとこだけ、すくうのは無理なわけで、合点いきました。

これでまた、頭のシワが増えて，お利口さんになったワケで。

得したね！
やった！いい気分。

そんなこと、のこのこ階段上がりながら考えていたら、電話が鳴った。

急いで出ると、母だった。

「ハァイ。僕のマミー。今日は、どんな気分？」

「ボーイ！あのね、なんなの？この手紙、宛名がナイルになっているわ！私はナイルじゃないわ！」

「ソーリー。マミー。なにかの手違いだ！」

そう言って、なんとか母さんを落ち着けて、電話を終わらせた。

嗚呼。きっと酒に酔って、その流れで出した手紙だ。
母さんをナイルと書き間違えるなんて。

酔っていたとはいえ、僕も、まだまだガキだな。

ナイル川への思慕と、母さんへの想いが重なるとは。
とんだ、坊ちゃんだな。僕も。
苦労知らずな、いい育ちが出てしまっている。

いや、これは恥ずかしい。
これりゃ、婚期を逃すぞ。

しかし、そういう女性を、オールドミスとか言っていたな。
昔は。
今じゃ、死語だが、、、。

女性蔑視を象徴するかのような、言い方だ。

まったくけしからん。
今はなんと呼ぶか定かではないが、男に関して言えば、独身貴族と言われているな。

いやはや、優雅な感じが出ていて個人的に、この言い方を好んでいる。
受動的独身ではなく、能動的独身というのを、主張している所が、好きなポイントだ。

まさに、大衆が受け入れやすいワードだと言える。

世の中には、うまいことを考える人がいるんだなあと、しばし関心していた。

そしてまた、ついついナイルに想いを馳せていると、

ハッとした。
ナイル川は氾濫する。
それにより、家を失う人も出てくる。
しかし、氾濫により、土に栄養がつく。待っているのは豊作だ。
エジプトは、ナイルの恵みを十分に受けている。

そして、母なるナイルの優しさと厳しさ。

嗚呼。
やはり、ナイルはエジプトの母だ。

激励と叱咤。
飴と鞭。

それでこそ、本来の母の姿だった。