ワンオーナードッグ
wc

祖母の隣でうたた寝をしていた
黒い車が祖母を連れ去る
遠くの信号に消えても
走り、吠え続けて
動かない時間が永くなり
毎日散歩に連れ出され
歩かされ
もう吠えない
喫茶店の
檻の隅の形に折れ曲がった尻尾
かすかに白く濁り
なにもうつさない目
檻から出され
名付けられ
身じろぎせず
季節が一つ巡って
右前脚を
一足出してはひっこめ
ひっこめては、出し
ふたつ、みっつ先にある草の匂いを嗅ぎ
とまどっては歩く
そして走り
乳房の付け根に芽ができ
芽が腹を破り
その芽をずっと舐め、匂いを嗅ぎ
震えながら緑色の台座の上で
針を刺され
薬を飲まされ
首にパラボナアンテナをつけられ
力の入らない後ろ足
はらに巻かれたハーネスで
歩く散歩道
吠えたことがない
その目の焦点は
嗅いだ匂いの先で
結び
うつしたのか





自由詩 ワンオーナードッグ Copyright wc 2023-08-26 17:34:06
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