星のない夜
リリー

  野の花の 優しさが
   あなた

 一ふりかえり見る
 広漠とした 高原の葉ずれの音に
 それは
 しみこみ 又はねかえり
 幻影の様だった 稚い愛

 北方に 連なる山はだが
 私を打ち倒してしまう程
 輝いていた
 夏

 
  野の花の 暗さが
   あなた

 交差点の街路樹に音もなく降る雨
 その芯にある 冷たさに
 ふと触れた 夕闇

 溢れる涙
 すぼまってゆく 胸の希望

  星のない夜が明けて
  陽のない朝が在った


 稚い夢の 哀切
 頼りない未練 
 か
 ほんとうに寂しいのだと云う術もなくて
 
 
  
  


自由詩 星のない夜 Copyright リリー 2023-08-24 20:55:22
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