あしあと
山人

白い、
そして少し青みがかった雪に身を投ずれば、
はるか昔の少年がいる

そういえば私は昔、少年だった。
と言葉を発する

誰にでもない、
おびただしく佇んだ雪達に向かって

私は少年だった、


今降ったばかりの雪に名をつけるでもなく
私は、昔少年だった。
という言葉を最後に、言葉を発しなかった

雪を退ける機具でひたすらに動く私の目の前には
無造作に雪は降り積む

空を見上げる。
すると私は上に登り始める
上へ上へ。私は登ってゆく

それはあたかも
なにかを達観した浮遊物のようでもあり
実体のない、虚無であったりする

冬の子宮に入るようだと、私は思う
呼吸し、心臓を稼働させて

私は足跡を、
雪面に、
たくさん、つけた。



自由詩 あしあと Copyright 山人 2023-08-23 07:22:11
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