あしあと
山人
白い、
そして少し青みがかった雪に身を投ずれば、
はるか昔の少年がいる
そういえば私は昔、少年だった。
と言葉を発する
誰にでもない、
おびただしく佇んだ雪達に向かって
私は少年だった、
と
今降ったばかりの雪に名をつけるでもなく
私は、昔少年だった。
という言葉を最後に、言葉を発しなかった
雪を退ける機具でひたすらに動く私の目の前には
無造作に雪は降り積む
空を見上げる。
すると私は上に登り始める
上へ上へ。私は登ってゆく
それはあたかも
なにかを達観した浮遊物のようでもあり
実体のない、虚無であったりする
冬の子宮に入るようだと、私は思う
呼吸し、心臓を稼働させて
私は足跡を、
雪面に、
たくさん、つけた。