音色
久遠恭子

草むらで月鈴子がリリリンと鳴くから
季節が移り変わっていくのを感じる
風鈴の音色とも少し似てしまうから
間違わないように風鈴は小箱に仕舞おう

静まり返った夜の向こうで
あなたは何を思うのかしら
その羽音を聞いて
窓を開けてみるのかしら

リリリン
透き通るように遠くで
リリリン
耳を澄まして

ふと思い立ってドアを開けて
暗闇を手探りで歩いた
全ての形が何かを暗示していて
世界は万華鏡みたいだった

降り注ぐ空気が
少し冷たくなって
鋭敏な感覚が
少しずつ戻って

リリリン
月鈴子の羽音が
リリリン
涼風を運んでくれたのか

瞬きをする気持ち良さとか
誰かと話すのが楽しかったこととか

思い出してクスッと笑った


自由詩 音色 Copyright 久遠恭子 2023-08-23 04:24:41
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