なけま、たへるよんう゛くを

焼けつく夕日が焼けつく 脳裏を焼いて 焼き付く夕日
まぶしく夕日がまばたく まばらに赤く 火をまぶす

赤錆びて ブランコ 赤錆びて 回る子の鎖
うらぶれて倉庫の 何世紀 遠いどこそこに かぶれていた

切る 切れ ダイアルの 電源を切れ 線を ニッパーで切れ
火花が散れ 銅の線から 下らない口裏を剥げ

かがり火が溶かしていく 炭と蝋を 燃える 染みて 獣の油
物語だけ 物語だけになれ
古来よりの 口伝えの


踊らない城になれ
渡らせない川になれ
貪りつく狼のつららで研いだ牙になれ

夕日が埋まる墓を越えてさまよう時計の壊れた種族になれ
錆びた肌をこすってはまた幾重にも錆び付く 隕石の軌道の斧になれ

一人になれ


ねじ伏せて回る鉄板の麒麟になれ
かすめる船が排気で引く 聖地を汚す雲になれ

歳経た人さらいの袖に仕込まれたナイフになれ
海の下でねじ切られて来たシマウマ皮の大陸になれ
家畜の胃でできた水筒の口から 一度だけ振る舞われる涙になれ

一曲目では幽霊の足音
二曲目では亀の行軍
三曲目には転がり草
四曲かけて死の矢になれ

赤い草汁を塗りたくられた
一人になれ


自由詩Copyright なけま、たへるよんう゛くを 2023-08-23 02:53:16
notebook Home 戻る