爪痕[まち角24]
リリー

 

 フライパンで こんがり狐色にした手羽元と
 ガーリック香る炒め野菜を煮込む
 夏のスープカレー

 そんな 今晩のメニューを
 考えていたけれど
 取りやめた
 台風一過とはいかず灰色の雲に
 覆われる 朝のこと

 街の溝川
 コンクリートの橋の上
 散乱する小枝や葉っぱへ目を落とすと
 転がっている 子雀
 暴風で煽られて叩きつけられたのだろう

 街路樹の根もと
 短い草が茂る所に両手で運んで来て
 そっと置いた むくろ二体

 我とても
 若き生命あるものなれば
 
 死顔の残像に
 暫くは 一杯飲みに行くことあれど
 焼き鳥も控えたくなって
 
 駅へ向かいながら 誰かに聞いて欲しかった

 


自由詩 爪痕[まち角24] Copyright リリー 2023-08-17 09:19:27
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