陽の埋葬
田中宏輔
いつから、
あそこにゐるんだらう。
日溜まりの向かふに、
声がする。
日溜まりの向かふに、
声がする。
わたしの声だ。
それは、
とても懐かしい、
わたしの声だつた。
(あのとき、……、)
はぐれた庭に、
わたしがゐる。
(あのとき、……、)
はぐれた庭に、
わたしがゐる。
──カンダタの、はぐれた庭だ。
(あのとき、……、)
華を沈め、
(あのとき、……、)
魂をほどいたのは、
──わたしだつた。
(あのとき、……、)
しづかな庭で、
魂は
わたしからはづれ、
わたしからはぐれて、
また戻つて、
またはぐれて、
──いいえ、
わたしは、
どこへも行かなかつた。
また戻つて、
またはぐれて、
──いいえ、
わたしは、
どこへも行かなかつた。
どこへも行かなかつた。
ただ、しづかな庭で、
ひと掻きの灰のなかを
出たり入つたり、
出たり入つたり、
繰り返してゐた、
繰り返してゐた、
ただ、それだけだつた。