友だち
中田満帆
洗いざらしの衣類のなかで、リーバイ・パタの詩画集をひらく
女のいない男がしてやれるのはたったそれだけのこと
コインランドリーが不法占拠されてしまう夢を
ついさっきまで見ていたんだよ
もしきみが電話をかけてくるならば、
ほんの少し孤独を信じられる
ほんの少し痴性を信じられる
おれに与えられたものに唾を嘔いて
おれに与えられなかったものに焦がれて
ついさっき犬の便器に花をちらした
やがてその花が城に成長するまでにじっと
どれだけの戦があり、歴史が書き換えられるかをきみと一緒に眺めたい
もしもおれがまだきみの友人で、きみにとってなにかであるのなら
午後の時計がベルを鳴らす
きみの知らない場所で、きみが知らないひとと会う
ばかげた冗談をいくつもいって、死そのものを笑いものにしてやった
きみのいう自殺について発言なんて死の実証よりもたやすいものだ
きみがすべきはきみの窓から友人を呼び集めること
きみがきみであるという論証を獲ることがなによりもさきだね
おれはじぶんの死について大した考えはもってないけど
いえるのは迷惑、──そして生きるよりももっと不可能な満足さだ
洗いざらしのウェスタン・シャツを着て、リーバイ・パタの詩画集をひらく
かれの語る声が聞えるよ。
月のおかげで
僕の中の壊れた破片が見えて
つなぎ合わせるよりも
そっとしておいていいよと。
ここは僕が洗われる
裸の世界。
ともだちに囲まれた
孤独の場所。(リーバイ・パタ「ともだち」より)