石ころ?
soft_machine

 卒業の記念を持たない人が
 ポケットに
 石を忍ばせているらしいと
 風の噂が耳を掠めた

 石ころの仕込みは人それぞれらしい
 代々受け継がれるモノもあれば
 下駄箱に投げこまれていたり
 都市伝説さながら
 いきつけの駄菓子屋で用事にかこつけた
 告発まがいの伝言ゲーム
 等々

 石ころはどんどん転がしたほうがいいという
 ポケットの中では
 あまい手くせがやけに大人びてゆき
 町のにおいもしみつく
 靴べらしの夕ぐれの
 乾いた音もするらしいが
 風にめくれた頁の一コマが
 いつもの際どいシーンを開くたび
 するどい痛みがよみがえる
 たぶん?
 いや結局
 一度も使われることなく摩滅するのだとしたら

 壁の凹みは
 なまの拳の衝撃を正確に伝えているのか
 投げあげられた末に
 どうさ迷うべきかも
 この傷あとの謎
 安いだけの学食や生徒の扱いが雑な恩師
 闘乱の狼煙ひと筋
 しずかに土に還るタイムカプセル
 みんなてのひらにあって
 机の裏で秘密をもみ消したって
 見つけにくい校舎裏の
 さくらの切り株を囲み
 みじかい線で素描した 憧れの人

 とっくに冷めきってる筈なのに
 何故? つかみきれない

 アルバムに映された
 すべての顔が石ころ





自由詩 石ころ? Copyright soft_machine 2023-08-10 05:59:09
notebook Home