石ころ?
soft_machine
卒業の記念を持たない人が
ポケットに
石を忍ばせているらしいと
風の噂が耳を掠めた
石ころの仕込みは人それぞれらしい
代々受け継がれるモノもあれば
下駄箱に投げこまれていたり
都市伝説さながら
いきつけの駄菓子屋で用事にかこつけた
告発まがいの伝言ゲーム
等々
石ころはどんどん転がしたほうがいいという
ポケットの中では
あまい手くせがやけに大人びてゆき
町のにおいもしみつく
靴べらしの夕ぐれの
乾いた音もするらしいが
風にめくれた頁の一コマが
いつもの際どいシーンを開くたび
するどい痛みがよみがえる
たぶん?
いや結局
一度も使われることなく摩滅するのだとしたら
壁の凹みは
なまの拳の衝撃を正確に伝えているのか
投げあげられた末に
どうさ迷うべきかも
この傷あとの謎
安いだけの学食や生徒の扱いが雑な恩師
闘乱の狼煙ひと筋
しずかに土に還るタイムカプセル
みんなてのひらにあって
机の裏で秘密をもみ消したって
見つけにくい校舎裏の
さくらの切り株を囲み
みじかい線で素描した 憧れの人
とっくに冷めきってる筈なのに
何故? つかみきれない
アルバムに映された
すべての顔が石ころ