こどものせかい
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 子どもが さけぶ 肺をからにして
 名前を奪われた 動物を確かめ
 さけぶ こめかみをふるわせ
 おなじ靴、おなじ服
 好きになれない 名前 みなひとまとめに
 ぬぎ捨て駆ける

 さけぶ 輝くもの すべてが道で
 あらゆるものが標識された
 世界の怒りを
 ただ 美しい 黄昏にのみ込ませまいと
 ぶつける拳
 今日が、明日が 雲に追いつけないなんて
 刺さる棘が抜けないなんて
 抱きしめるふりして
 ふり返らせようとする者に

 さけぶ
 深い川は ここから先でいきどまれ
 木の枝は てっぺんまでくるな
 はち蜜 盗むべからず
 それは ことばの前から みんな解っていて
 道に迷っても 構わなかった
 さけぶ
 もう ひとりじゃない
 これからは みんな無人です
 そのままつっ切れ
 網を切りひらけ
 そう誘いかける神さまが
 まるでやさしくないから
 信じる こころは別にある

 雲が待ってる そう見える
 声なき声も もう二度と口を閉ざさない
 さけび 回転する火を
 この朽ちつつある幹に点す

 そして まわる
 張り裂け 溶けあい
 はじまりをわらう
 骨を毟りながら 灰化する
 橋の上から はだかの弓バランスで





自由詩 こどものせかい Copyright soft_machine 2023-08-09 15:18:29
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