医ヰ嶋蠱毒

唸りを上げる鉄塊よ
轟音を上げて泣け

窓にびっしりと憑依した
発話する羽蟲と
奴らを随え歩む詐欺師達の
ただ
憩いの熾火のために
燃やされた男の
一握の遺灰を
精密に組み上げた先で
生きている機械

いま都市の
景観を駆け抜け
唯一
お前自身のための
殺戮を始めよ
脳髄を黒く染めてから
スロットルを上げる

銀色の翼が裂き
ギロチンが喰らう
絶え間ない加速
一列に並んだ首を斬り落とし
噴き出した血で
満月が
紅を引く様を観に
より高高度へと舵を切れ

騒々と群れる雑踏への
ささやかな贈与は
彼らが何よりも
お前を道具と見做した上で
こよなく愛する
二十mmの弾丸をぶち込んでやること
だから
お前は胸を張り
「死ね」と言うことができる
「ありがとう、そしてさようなら」

お前は
打ち込んだ楔を棄て
遥か塔の上空へ飛ぶ
拠り所は
肉体を吐き戻すことで
なおも人でありたいと願うところにある
賢者が
サイレンを鳴らして
「そこに咲く華の香りを嗅ぐためだけに」
自らを雨曝しに
幽霊の声を詰め込んだ
爆弾を握り締めたまま
墜ちることなく
唸りを上げる鉄塊よ
轟音を上げて泣け


自由詩Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2023-08-07 19:17:28
notebook Home 戻る