シロイルカとの日々
そらの珊瑚
夏の雨が降るとやってくるシロイルカ
冷蔵庫から勝手にサーモンなんか出して盗み食いしてる
(いいけど、いいんだけどね。そのために買っといたんだけどね。柿の種もあるよ)
腹が満ちたら、さてっと、やるかと言って
フセンになにやら書いてはそこらへんにペタペタ貼っている
シロイルカ「フセンって便利だと思わない? 大切な言葉を忘れないようにノートに書いても、引き出しにしまってそのうち存在すら忘れちまう。だから断然! フセンなんだよ。フセンなら出しっぱなしにしておける」
シ「シロイルカって三回言ってみて」
私「シロイルカシロイルカシロイルカ」
シ「じゃあこれは?」
シロイルカが見せたのはフセンに描かれた黒いイルカ
私「クロイルカ?」
シ「残念でしたー黒く塗ったシロイルカでしたー」
シロイルカとクロイルカは
色が違うだけ
中身は一緒だった
ツルン
ツルン
ペタン
ペタン
そのうち部屋はフセンだらけ
うっとおしいったらないけれど
見慣れたらそれはそれで
ちょっと愛おしく
扇風機の風があたるたび
フセンがそよぐから
世界のことわり通り
片翼と片翼は惹かれあい貼り付き始め
大切な言葉
だけど同時に はかない言葉たちは
左右対称に
小さく羽ばたき
晴れを待っている
翔んでいくための空を
泳いでいくための海を
またおいで、シロイルカ(クロイルカ)
約束なんかはしないけど